こんばんは
今回の覚え書き内容は表題の通りです。
車両をよく観察している人や鉄道模型を趣味でやっている人にとっては度々気付かされる事かもしれませんが、近鉄各線で現役中の各系列・形式には、他車と比較した時の内外装の見た目で似ていたり違ったりする細かな要素が様々にあります。
車両ごとの共通点や差異は、現在に至るまで多様に見つける事が可能です。差異に関しては、他系列間のみならず同一形式間でも色々と存在しています。この違いの発生要因は、車種の違いであったり後の改造によるものであったりと様々あるように思いますが、今回は後者にあたる例として、特急車12200系の車体側面にある行先案内表示機の設置高さについてメモしておく事にしました。
■ 第25〈メモ〉
●近鉄12200系-側面行先案内表示機の設置高さ
12200系は、大阪万博(1970)や難波線・鳥羽線建設と志摩線改軌に伴う特急車の運転区間拡大などを見越し、輸送人員・必要車両数の増加と車内サービスの向上に対応する目的で1968年度末に登場した特急車です。この1年前には「(旧)スナックカー」こと12000系が製作されており、後続の12200系は、12000系で採られた内外装・機能の諸要素を改良して製作されています。
約8年に渡って増備が続けられた12200系は、その製作期間で計168両(56編成)の車両が製作されました。現在までの近鉄特急系列では最多となる両数が製造され、登場した高度経済成長期以降、低成長・バブル・バブル崩壊の計4期に渡って長らく近鉄特急車の顔として活躍していましたが、老朽化の進行や後続特急車の登場、沿線人口減少に伴う特急需要減等の事情が相まって2000年から廃車が始まっており、そこから徐々に廃車や転用(=[特急車→団体専用車])が行われて数を減らしています。その後、80000系「ひのとり」の登場・増備に玉突きされる形で、2021年2月に定期運用を持つ特急車としては引退しました。
さて、そんな12200系ですが、車両は他の近鉄特急車と比較すれば長期かつ大量に製造されたため、製造段階での仕様変更のほか、後の改造による形態差が多様に存在します。今回の〈メモ〉では、後の改造で発生した差異の1つである側面行先案内表示機の設置高さについて書き残しておく事にしました。
12200系は、近鉄特急車で初めて車体側面に行先案内表示機を内蔵した系列ですが、全車の登場時と一部の車両の晩年時とで表示機の位置を比較すると、設置高さに差異が発生しています。
手持ちの記録や「サイドビュー近鉄1」「近鉄電車写真集7」等の書籍に掲載されている画像を見る限り、登場時からの高さを変更した車両群は、90年代から2000年代にかけてB更新を通過して近年まで現役だった編成群です。一方で、現在視点でのA更新止まり、もう少し具体的に言えば、車内を登場時の21000系「アーバンライナー」に準じたスタイルへ変更される事なく廃車となった車両群は、登場と変わらない高さを維持して活躍していた様子があります。後者の車両群は、2010年代前半までに多くが廃車となっていますが、これに当たる元12231Fは、2021年初頭まで団体専用車として活躍しており、他の同形B更新済み車両と連結した際には、設置位置の差が如実に表れていました。
以下、上記2種の車両の行先案内表示機設置位置について、A更新止まりで廃車となった車両群から設置高さを念頭にアップで見ていきます。
A更新止まりで廃車となった車両群、すなわち登場時からの高さを維持していたと思われる車両群の表示機は、見たところ、縦長さの中央と近接する客用ドアの上端が合う位置に設置されている様子です。先頭車両前頭の紺色塗装せり上がりの部分で見ると、表示機と被る紺色部分の縦長さは、表示機の縦長さの3/4ほどを占めています。
一方、B更新までの2回更新を受けて登場時の「アーバンライナー」と同等の内装レベル(以下、「アーバン内装」と呼称)に更新された車両群の表示機は、A更新止まりの車両と比較して設置位置が若干上げられました。
先に用いた基準で視ると、近接する客用ドアの上端は、表示機の縦長さ下半1/3程度の位置に合うようになっており、表示機下部と紺色塗装の間にある橙塗装部の縦長さを見ても、表示機の方が上げられた事が窺えます。また、先頭車両前頭の紺色塗装せり上がりの部分で見ても、表示機と被る紺色部分の縦長さは、表示機の縦長さの3/4ほどであった従来から1/2程度に変更されており、やはり表示機が上げられた事が窺えます。
12200系を車種としていて、2021年までA更新止まりの車両とB更新済の車両が混在した15200系においても、塗装の塗り分け位置を基準として視た時に表示機の設置位置の差は見て取れました。側面に案内表示機が残されたのは2013年度から15200系に編入された車両群ですが、A更新止まりで編入された15204Fの各車(元12231F)とB更新済で編入された15205F&15206F(元12243F&12248F)の各車を比較すると、B更新済でアーバン内装となっていた後者の表示機は、明らかに前者より上方に設けられている事が近隣する線塗装から判断できます。
車両によって行先案内表示機の設置高さに差異が存在した事は以上の通りですが、続いて位置の変更が行われるようになった要因や時期について推測を含めながら触れます。
これまでの様子から判断するに、行先案内表示機の設置位置の変更に大きく要因しているのは、車内のアーバン内装化であると思われます。この内装工事を受けなかった車両群は登場時からの高さを維持し、それ以外の車両群は高さが若干上方へ変更されている事から、更新工事に伴う車内機能の一部変更や荷物棚の刷新など内装に大幅な手を入れる過程があった事は、高さ変更が行われた1理由として考えられそうです。
このアーバン内装化が最初に施行されたのは、12252FのA更新時です。従来までの12200系のA更新および内装更新は、先頭車に対してのみ12400系の車内に準ずる形で行われていましたが、1991年3月付で完了した12252Fの工事を起点に4両以上の編成を組む先頭車と中間車を一括かつ「アーバンライナー」の車内に準ずる形で更新するスタイルが定着しています。なお、12200系の中間車で最初にA更新を受けたのは12252Fの中間車でした。
A更新後の12252Fは、内装の刷新と併せて外板塗装も試験的に明るい基調のカラーリングへと変更されて一時はかなり個性的な編成でしたが、その後に「ACE」と同じ色合いの塗装となり、他の多くの編成もアーバン内装化されていく事で12200系リフレッシュ編成の1本として目立たなくなっています。
この12252Fで興味深いのは、A更新後における行先案内表示機の設置高さです。引用したTweetに掲載されている画像や「サイドビュー近鉄1」に掲載されている写真等を見る限り、アーバン内装化された12252Fの当初の行先案内表示機の設置高さは登場時と変わらない(現在視点でのA更新止まり車両群と同じ)位置とされています。後続のA更新でアーバン内装化が行われた12243Fは、「鉄道ファン」誌のPOST欄(Vol.32/No.370-P118)に掲載されている更新後高安出場前の写真を見る限りでは設置位置が上げられているので、12252FのみA更新後も従来と変わらない位置とされていた模様。ただ、先ほど挙げた画像の通り、12252Fも引退時には上方へ上げられており、こちらは数年後のB更新時あたりで他アーバン内装車と合わせられた事が考えられますが、詳細な改造時期は不明です。
アーバン内装化の先駆け2本で行先案内表示機の設置高さが異なっていた理由は分かりません。個人的には、12252Fから12243Fの更新過程で荷物棚付近の処理に変更が入って設置位置も変わった可能性を考えていますが、実情は不明です。A更新後(B更新前)の12252Fおよび12243Fの車内の様子を詳細に比較して見た事がないので何とも言えませんが、12252Fがアーバン内装化の第1本目として試験的に車内各所が工事されたと考えるなら、それを踏まえた更新過程で2本の内装工事内容に変化があって、その差異が外見の差異に直結しているという事は1可能性としてあるのではないかと思います。
今回の〈メモ〉は、車体の外観をテーマに12200系へ焦点を当てた内容でした。やや細かい要素への着眼になったかもしれませんが、こうした内容を(出来れば実車への観察を交えて)部分的にでも〈メモ〉として残しておく事自体は、車両に関して情報の参照や振り返りを行う際に少しばかり有意義になるのではないかと思えます。過去の自分の着眼点や気になっていた事を後から見直す事が出来るという点でも書き残しておいて損はないような気はしますし、今後も興味を持てた話題があれば〈メモ〉で取り上げていこうと思います。
今回の〈メモ〉は以上です。
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