こんばんは
今回の覚え書き内容は表題の通りです。
車両をよく観察している人や鉄道模型を趣味でやっている人にとっては度々気付かされる事かもしれませんが、近鉄各線で現役中の各系列/形式には、他車と比較した時の内外装の見た目で似ていたり違ったりする細かな要素が様々にあります。
車両ごとの共通点や差異は、現在に至るまで多様に見つける事が可能です。差異に関しては、他系列/形式間のみならず同一系列/形式間でも色々と存在しています。この違いの発生要因は、登場時期の違いであったり後の改造や交換によるものであったりと様々あるように思いますが、今回は両方にあたる例として、一般車6400系の車体側面に見られる故障表示灯についてメモしておく事にしました。
■ 第27〈メモ〉
●近鉄6400系-車体側面の故障表示灯
6400系は、南大阪線系統初の高性能車となった6800系「ラビットカー」の老朽化に対する代替用車両として、1985年度に登場した形式群です。近鉄の狭軌線営業車で最初にVVVFインバーター制御を採用した形式群でもあります。その後、6800系の置き換えペースに合わせて3次に渡る製造が行われ、1987年度までに6本(=6401F-6406F)が竣工しました。
以降においても、性能・運用面に関わる各部位や車体形状などで幾らかの変更点が加えられながら複数形式に跨る体裁で増備が続き、最終的に系列全体で33本(=6401F-6433F/6400・6407・6413・6419・6422・6432の6系からなる形式群)が製作されました。いずれも登場してからは継続して南大阪線系統で活躍しており、一部編成には支線での都市型ワンマン運転に対応する改造が後から施されています。
さて、6400系列で最初に登場した6400系6編成をさらに製造年次別で分類すると、その内訳は1次車2本(=6401F-6402F/1985年度竣工)・2次車3本(=6403F-6405F/1986年度竣工)・3次車1本(=6406F/1987年度竣工)となりますが、2023年現在、1次車と2&3次車(&以降系列)とでは車体側面の故障表示灯の有無で差異があります。
今回の〈メモ〉では、この故障表示灯の有無や外観について、6400系に焦点を当てる形で整理しておく事にしました。
6400系の現況へ入る前に、まずは故障表示灯についてです。営業用車両で機能させる車側灯の1つとして定着したこの灯具の概要は、近鉄車両等を対象としたメンテナンス・改造を事業とする「近鉄車両エンジニアリング」のTwitter(X)アカウントに投稿されたツイート(ポスト)内容が良い参考になるため、以下に引用する形で紹介します。
故障表示灯は、引用ツイート(ポスト)に記載されている内容の通り、車両の内部および主要機器の異常を外部へ明示的に知らせる事が出来る灯具です。営業用として製造された近鉄車両の側面には、これの他に扉の開閉を知らせる戸閉灯が常設されており、扉が開扉状態となっている時は赤色に点灯します。故障表示灯は、こちらと色を変える形で黄色点灯です。現在の近鉄営業用車では、一般車・特急車・団体専用車の車種を問わず、どちらも新造車体の側面に漏れなく搭載する灯具となっており、最新車の「ひのとり」も例外ではありません。
これら常設車側灯の内、戸閉灯は現役営業用車の全てで新造時から取付されていますが、故障表示灯は新造時から取付されている車両とそうではない後付け車両の2グループに分けられます。新造時を基準に故障表示灯の有無を分類するなら、1980年代に製造された車両は混在しており、6400系だと1次車が無・2次車以降(&後続系列)が有という状況です。6400系が製作された当時は、車側灯の2灯常設か否かが迷われていたと思われる過渡期で、同系1次車と近い時期に竣工した3200系は2灯常備で登場しています。但し、近鉄の営業用車で最初に2灯常備とされた系列は、3200系ではなく今は無き3000系でした。
3000系は、近畿車輛がステンレス車体試作車として製造した、これまでの近鉄でも唯一無二のステンレスカーです。制御機器の不具合から2012年に引退した系列ですが、登場時は、車体材質以外にも、予定時期が迫っていた京都市交通局烏丸線との相互直通運転を見越した新機軸が多数盛り込まれており、その内の1つが故障表示灯だったと思われます。
2灯は、後からの改造が容易でない車体ゆえか、長方形の灯具ユニットの中にセット化されて埋め込まれており、[上:戸閉灯/下:故障表示灯]のレイアウトは、3200系以降の新造系列にも継承されました。これは、同系以前に製作された界磁位相制御車(8800系)やチョッパ制御車群(1400・8810系等)やVVVFインバーター制御試作車(1420系)といった一般車では採用されておらず、特急車での採用に関しては21000系まで待つ事となります。
ちなみに、新車としての3000系を紹介ないし概説する各資料を閲覧したところ、故障表示灯の呼称は様々でした。例えば、『鉄道ファン』誌では「故障車表示燈(黄)」・『電氣車の科学』誌では「車側表示灯(黄)」・近鉄の『ステンレス車概要書』では「警報灯」と表記されています。他、6400系の有無を言及した際の『サイドビュー近鉄(5)』誌では「故障通報灯」と記載されており、資料によって呼び方はバラバラです。先に引用した近鉄車両エンジニアリングのツイート(ポスト)では名前の言及が無く、もしかすると会社や立場によって呼び方は多様なのかもしれません。当ブログでは、個人的に分かりやすさを感じた「故障表示灯」と呼称する事にしましたが、メジャーな呼び方はどれなのでしょうね。
3000系を除く1980年代以前に製造された現役車両の故障表示灯は、漏れなく後付けです。1980年代以降の登場で戸閉灯のみで竣工した車両についても、7000&7020系と6400系1次車を除けば、全車が後付けされています。追設のタイミングは、車体に大きく手を入れる車体更新の実施時です。1980年代の途中までは行われていませんでしたが、VVVFインバーター制御の量産一般車や21000系が登場した後、1988年度の工事車両から追設が始まっています。灯具の位置は、3000系で採られたスタイルとは別で離れ離れとされており、これは一般車でも特急車でも共通です。1988年度以前に最初の車体更新を受けた現役車両については、2回目のリニューアル時に追設されて現在に至っています。
一方、現在まで故障表示灯が追設されていないのが先述した7000&7020系と6400系1次車です。前者に関しては、2000年代に製作された7020系でも省略となった事から、恐らく相互乗り入れしている大阪メトロ中央線の車両に合わせていると考えられます。後者に関しては、アルミ車体で手が入れづらいという事情はあるのかもしれませんが、これまで1度も車体更新が行われていない車両群でもあるので、もしかしたら今年度からスタートしているリニューアル工事の対象となった際に追設される可能性はあるかもしれません。
さて、ここからは6400系に絞った故障表示灯の現況です。上記で触れた灯具の有無やリニューアル工事開始後の最新情報も含めて、2023年末現在の状況を整理しておきます。
まずは故障表示灯の有無です。1次車と2&3次車以降の6400系列とで車側灯部分を比較すると↑のような様子で、上述してきた通り、1次車には故障表示灯がありません。また、比較無しの一見だと分かりにくいですが、戸閉灯の位置も異なっており、1次車の戸閉灯は以降車の故障表示灯と同位置です。なお、以前の〈メモ〉でも取り上げたように、6400系の1次車は塗り分け位置が変えられているため、↑の比較画でも車番位置とマルーン塗装の間の距離は異なっています。
〈参考〉以前の〈メモ〉
続いて外観です。戸閉灯・故障表示灯は、共に着色カバーの内に収められる見た目で長らく定着しており、新造車両だと22600系「Ace」まで着色カバーが採用されました。しかし、50000系「しまかぜ」では透明カバーの内へ各灯具に対応した発光をする光源が収められる仕様へと変更されており、既存車に対しても2013年度以降の車体更新車(A更新・B更新/特急車・一般車・団体専用車)で同様の変更が行われています。
この変更の動きは、VVVFインバーター制御車のリニューアルが始まった2023年度も継続して行われており、既にリニューアル工事を終えた6400系2本(6403F&6404F)は、A更新施行場所の高安にて車側灯のカバーが2灯とも透明化されました。これまでの流れからして、今後の入場車両に対しても同様の変更が行われるものと思われます。
但し、現時点での最新出場車である6404Fに関しては、高安出場後に入った五位堂にて故障表示灯のカバーが着色化されています。従前カバーとはまた別色の黄色カバーで、似たような事例には標識灯カバーの色味変更(橙→黄色)があるものの、故障表示灯での変更は今回が初見でした。私個人は、今のところ、高安で灯具カバーが透明化された車体更新車に同様変更がされた事例は聞いた事がありません。
戸閉灯のカバーは高安出場時と同じ透明なままとされていますが、今後は故障表示灯のカバーのみ6404Fと同様の形で色を変えてくるパターンが出てくるのかもしれませんね。戸閉灯のカバーが透明化された分、遠目から見ても着色が目立つ仕様となりましたが、元の点灯時が黄色なので、個人的には返ってややこしくならないのだろうかとも思ってしまいます。
他系列を含めて今後の動きにも注目したいところです。
今回の〈メモ〉は、故障表示灯をテーマに6400系へ焦点を当てた内容でした。やや細かい要素への着眼になったかもしれませんが、こうした内容を(出来れば実車への観察を交えて)部分的にでも記事として残しておく事自体は、過去・現在の車両に関する情報の参照や振り返りを行う際に少しばかり有意義になるのではないかと思えます。過去の自分の着眼点や気になっていた事を後から見直す事が出来るという点でも書き残しておいて損はないような気はしますし、今後も興味を持てた話題があれば〈メモ〉で取り上げていこうと思います。
今回の〈メモ〉は以上です。
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