こんばんは
今回の覚え書き内容は表題の通りです。
近鉄車両で時おり出て来る話題の一つに、車体正面で後部標識灯兼列車種別灯として機能しているLED式標識灯が交換されたというものがあります。この手の灯具交換は、「従前までの装備種と同じ物品で一部交換もしくは一新するケース」と「従前までの装備種とは別の物品で一部交換もしくは一新するケース」の2パターンに大別する事が可能です(以下、LED式の後部標識灯兼列車種別灯の事を「LED標識灯」と呼称)。
LED標識灯の灯具交換で注目されるのは専ら後者のケースで、10年程前だと5200系・5209系や21000系、最近だと5200系や20000系・26000系の交換が話題となっており、つい先日には5211系1本のLED標識灯も従前装備品とは別の品で一新されています。今回は後者の交換ケースにあたる例として、5200系列の車体正面で機能しているLED標識灯についてメモしておく事にしました。
■ 第8〈メモ〉
●近鉄5200系列-車体正面の標識灯
5200系列には、製造を通して生まれた各所改良点の有無を反映する目的で分けられた5200・5209・5211の3系が含まれるわけですが、先頭車にあたる各形式の車両正面に装備されたLED標識灯は竣工年度によって異なっています。
5200系の先頭車として活躍するク5100形およびク5150形が正面に装備するLED標識灯は、初期段階の装備(=交換開始前)だと2種類存在しました。1つは5200系第1編成の竣工と併せて登場した種類で、登場時の21000系や団体専用車化された18200系でも同じLED標識灯が採られています(以下、このLED標識灯を「タイプⅠ」と呼称)。
タイプⅠのLED標識灯が採用されたのは、5200系列だとク5100形およびク5150形のみです。他系列含め1989年度前半までに竣工した編成の先頭車がこれを装備しており、5200系の場合は5205FまでがタイプⅠ装備で、5206F以降は別種の採用へと移行しました。
5205Fと5206Fは共に1989年度竣工編成ですが、後者は1989年度後半にあたる1990年2月に竣工しており、そのLED標識灯を構成するLED素子ユニットは、同年1月竣工の26000系26101Fで採用された物と同一品とされました(以下、このLED標識灯を「タイプⅡ」と呼称)。
写真で見ても分かる通り、タイプⅠ・タイプⅡのLED標識灯では見た目(=LED素子ユニットの配列)に明確な違いが存在します。まずタイプⅠですが、こちらは標識灯1ユニットあたり[黄色8か所/赤色8か所]のLED素子が配置されており、LED標識灯は[縦4ユニット・横12ユニット]の配列で結合させた48ユニット構成で1つとされました。それに対してタイプⅡでは、標識灯1ユニットあたりのLED素子が[黄色45か所/赤色16か所]の配置(※1)となり、LED標識灯は[縦2ユニット・横6ユニット]の配列で結合させた12ユニット構成で1つとされています。
※1)タイプⅡのLED標識灯については、これが初期段階で採用された26000系や20000系のパンフレット(近畿日本鉄道株式会社発行)に詳細が掲載されています。前者は「南大阪・吉野線特急 SAKURA LINER KINTETSU26000-TECHNICAL NOTES-LIGHT ■標識灯/P19」・後者は「TECHNICAL NOTES-KINTETSU20000-LIGHT ■標識灯/P16」で図と共に解説があり、気になる方は参考になるかもしれません。
タイプⅡのLED標識灯は5206F以降でしばらく採用されており、5200系列では全ての制御車(5200系:ク5100形&ク5150形/5209系:ク5109形&ク5159形/5211系:ク5111形&ク5161形)に装備車両が存在していました。
但し、タイプⅡが採用されたのは1991年度竣工車までです。LED標識灯のLED素子とその配置は、26000系・20000系の後に登場した22000系で再び改められており、同系第1次竣工群より後に登場した系列の編成、すなわち5211系5213Fでは22000系と同種のLED標識灯が採用されました(以下、このLED標識灯を「タイプⅢ」と呼称)。
タイプⅡでは、色別で独立したLED素子の配置により標識灯点灯時は赤色設置部が[+]状に見えるという特徴がありましたが、タイプⅢでは緑色と赤色が横線状に見える仕様へと変更されています。
タイプⅢの標識灯は、1ユニット内にレンズが横並びで配置(9列4本と10列3本を交互配置)されている点が特徴です。レンズ内には緑と赤のLED素子がそれぞれ縦に1つずつ収められており、上下で隣り合う素子は同色で揃えられました(※2)。LED素子ユニットの配列に関してはタイプⅡと同様で、タイプⅢのLED標識灯も[縦2ユニット・横6ユニット]の配列で結合させた12ユニット構成で1つとされています。
※2)タイプⅢのLED標識灯については、これが最初に採用された22000系のパンフレット「TECHNICAL NOTES-KINTETSU22000-■標識灯/P20 (近畿日本鉄道株式会社発行)」に詳細(図と解説)が掲載されています。気になる方は参考になるかもしれません。
5200系列が登場時点から装備したLED標識灯は上述した3種でしたが、同系列に車体更新(1回目)が行われるようなってからは、タイプⅠとタイプⅡを置き換える別のLED標識灯が登場しました(以下、このLED標識灯を「タイプⅣ」と呼称)。
タイプⅣのLED標識灯は、5200系列の更新で初採用されたものではなく、「シリーズ21」各系列の先頭車が装備している物と同じです。こちらは後部標識灯(赤色)として機能する灯具と列車種別灯(黄色)として機能する灯具を分離しており、伊賀鉄道200系で元中間車から改造された先頭車正面でも同一品が採用されています。
系列で最初にタイプⅣのLED標識灯に変えられたのは5203Fで、車体更新完了直後に五位堂検修車庫で行われた検査・お色直し等実施時に併せてLED標識灯が[タイプⅠ→タイプⅣ]化されました。以降、車体更新実施時(=高安)や交換目的を含んだ工場入場時(=五位堂)に5200系と5209系の一部がタイプⅣのLED標識灯装備へと変えられています。
5200系列のLED標識灯をタイプⅣへ置き換える動きは、今のところ、大別して2回の時期で起こっています。最初の実施時期は2010年前後で、次が2020年度です。前者の時期に行われた代替では、交換開始時点で残っていたタイプⅠ(=5201F・5203F・5205Fが装備)が全てタイプⅣへと置き換えられました。ちなみに、21000系が装備していたタイプⅠに関しては、同じ時期、タイプⅢにて採用のLED素子ユニットで構成されたLED標識灯へ変更されています。
一方、タイプⅡに関しては、前者の置き換え時期で一部がタイプⅣへと置き換えられたものの、完全に置き換えられる事はありませんでした。車体更新と併せてタイプⅣへ変更されたのは、この時期より前の段階で[タイプⅠ→タイプⅡ]化していた5204Fのみです。他の編成(=5202F・5209F)は、交換目的を含んだ五位堂入場時に取り換えられました。
タイプⅣが絡まない交換の動きに関しては、2010年前後以外で幾らか行われており、例えば5202Fや5204Fは早い段階で[タイプⅠ→タイプⅡ]化されています。両編成の交換時期については分からないのですが、書籍やネット上に掲載されている写真や画像を見る限りだと、2000年代初頭時点で既に交換されていたようです。早い段階での交換事例は他にもあるかもしれません。
知る限りでは、他に5210Fや5212Fも早い段階(2000年代中盤?)で[タイプⅡ→タイプⅢ]化されています。この2編成に関しては、一斉交換の他に部分的な交換も行われており、2010年代中盤から同後半だと5212F(C#5162)が・2010年代後半からこの〈メモ〉を書いている現時点までだと5210F(C#5110)が、タイプⅡとタイプⅢを並存させた状態でLED標識灯を機能させています。2タイプのLED標識灯を混在させている理由は分かりませんが、もしかしたら、タイプⅣによる代替で捻出された部品の内、使える部品を再活用しているという事なのかもしれません。
2010年前後以降でタイプⅣが絡む動きはしばらくありませんでしたが、先述の通り、2020年度に入ってからは交換が再開しています。代替対象となっているLED標識灯はタイプⅡのようで、この〈メモ〉を書いている時点だと5206Fおよび5210F(C#5110の車掌台側のみ)以外の編成は全てタイプⅣのLED標識灯へ変更されました。
2020年度に入って急速にタイプⅣへの代替が進む理由は分かりませんが、タイプⅡのLED標識灯に関しては、5200系列以外に初期の段階でこれを採用した20000系や26000系(=26101F)でも2020年度に入ってから置き換えが行われています。5200系列に限らず代替の動きが起こっているあたりから察するに、もしかしたら、車両別によるLED標識灯の共通化やLED寿命を考慮した標識灯部品の確保等が交換促進要因として浮上してきたのかもしれません。
2010年前後で完全に消える事がなかったタイプⅡのLED標識灯ですが、昨今の交換状況を見るに、間もなく見納めとなる可能性は高いように思います。もしそうなれば、後部標識灯と列車種別灯を一体化したLED標識灯を持つ5200系列の“顔”も希少になりますね。
今回の〈メモ〉は以上です。
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