こんばんは
今回の覚え書き内容は表題の通りです。
車両をよく観察している人や鉄道模型を趣味でやっている人にとっては度々気付かされる事かもしれませんが、近鉄各線で現役中の各系列/形式には、他車と比較した時の内外装の見た目で似ていたり違ったりする細かな要素が様々にあります。
車両ごとの共通点や差異は、現在に至るまで多様に見つける事が可能です。差異に関しては、他系列/形式間のみならず同一系列/形式間でも色々と存在しています。この違いの発生要因は、登場時期の違いであったり後の改造によるものであったりと様々あるように思いますが、今回は前者にあたる例として、一般車6400系の車体に見られる塗り分けについてメモしておく事にしました。
■ 第24〈メモ〉
●近鉄6400系-車体マルーン色の塗り分け
6400系は、南大阪線系統初の高性能車となった6800系「ラビットカー」の老朽化に対する代替用車両として、1985年度に登場した形式群です。近鉄の狭軌線営業車で最初にVVVFインバーター制御を採用した形式群でもあります。その後、6800系の置き換えペースに合わせて3次に渡る製造が行われ、1987年度までに6本(=6401F-6406F)が竣工しました。
以降においても、性能・運用面に関わる各部位や車体形状などで幾らかの変更点が加えられながら複数形式に跨る体裁で増備が続き、最終的に系列全体で33本(=6401F-6433F/6400・6407・6413・6419・6422・6432の6形式群)が製作されました。いずれも登場してからは継続して南大阪線系統で活躍しており、一部編成には支線での都市型ワンマン運転に対応する改造が後から施されています。
さて、6400系列で最初に登場した6400系6編成をさらに製造年次別で分類すると、その内訳は1次車2本(=6401F-6402F/1985年度竣工)・2次車3本(=6403F-6405F/1986年度竣工)・3次車1本(=6406F/1987年度竣工)となりますが、2022年現在、1次車と2&3次車とでは車体正面および側面の窓周りを囲うマルーンレッド塗装の縦方向の長さが若干異なります。また、1次車は、現在と登場時とで同色の塗り分けが異なっており、系列の他車両と比較する中では、長らく内外装の面で特異な要素を持つ存在となっています。
今回の〈メモ〉では、この1次車2本の外装に焦点を当てる形で、6400系の車体で見られる上記マルーンレッドの塗り分け状況について整理しておく事にしました。以下、製造年次別の状況を[現在→登場時]の順で取り上げます。
まずは現在の状況です。先述した通り、1次車と2&3次車とで車体マルーン塗装の塗り分けは異なっています。独特となっているのは前者の方で、後者に関しては他のVVVFインバーター制御車群とほぼ同様です。
ここでは、2&3次車の様子を踏まえた上で1次車の現況を紹介します。
6400系2&3次車の正面・側面におけるマルーン色の塗り分けをVVVFインバーター制御の他形式車(=全線共通仕様車体[3200系基準]持ち形式&新全線共通仕様車体[1233系基準]持ち形式)と比較すると、それぞれ↑のような様子です。正面に関してはマルーン色下側の止め位置(=紅白色分断位置/正面窓下側におけるマルーン色部分の縦方向の長さ)、側面に関してはマルーン色部分の縦方向の長さがほぼ同じである事が見て取れると思います。
ちなみに、パッと見で塗り分けの区切りとなる位置や高さ方向の長さを把握する際に有用となる指標としては、正面だと向かって左側下寄りにあるHM掛けの器具(←但し、車両によっては同形車でも器具取付位置に差異があるので注意/HM掲出がある場合は器具取付位置が同じ比較対象車が同一形状のHMを据えた際の紅白色分断位置)、側面だと乗務員用扉の器具/枠や妻面寄り設置の転落防止幌、両方だと貫通幌(FRP骨)の下側にあるベルトが挙げられます。車両によっては車体形状の違いや個体差があるため、必ずしも全てが一様に有用であるとは言えませんが、まず単純に把握するなら個人的にはお勧めの指標群です。
続いて、6400系2&3次車以降で共通する車体の塗り分けと比較しながら、現在の1次車で見られる車体マルーン色の塗り分けを紹介します。
2&3次車以降の6400系列と1次車の前頭部の塗り分けを比較すると↑のような様子です。初見だと分かりにくいですが、正面にあるHM掛けや運行標識灯と尾灯が収まる一体型のケース、側面の乗務員用扉窓の左下にある器具などに目を遣ると、1次車の塗り分けは、正面・側面共にマルーン色塗装下側の紅白色分断位置が2&3次車の塗り分けより低めとなっている事が見て取れます。
ここからは車体正面と側面の一部を拡大して塗り分け差異をもう少し詳細に見ていきます。
まず正面ですが、こちらはHM掛けのみに着目すると塗り分けの違いが一層分かりやすくなります。比較対象の車体形状とHM掛けの位置が同じであるなら、その違いは明瞭です。↑は6400系の2形式で1次車と2次車の正面を比較したものですが、HM掛けを左右方向に通過する紅白色分断位置は1次車の方が明らかに下寄りとなっています。
側面に関しては、前頭部よりも妻面寄りの転落防止幌に着目すると塗り分けの違いが一層分かりやすくなります。先程と同様、↑も6400系の2形式で1次車と2次車の側面妻面寄りを比較したものですが、段違いタイプの転落防止幌の部品を左右方向に通過する紅白色分断位置は1次車の方が明らかに下寄りです。目印となりうる常設物が多いため、模型化等に関する計測でマルーン塗装部分の長さ違いを把握する際は、ここが一番やりやすいと思います。
続いて6400系各編成の登場時における状況です。先述した通り、現在と登場時とでは1次車の車体マルーン塗装の塗り分けは異なっています。2&3次車のマルーン塗装に関しては、当時の姿を写した記録(※)を見る限り、裾帯や屋根周りの赤色塗装の有無を除いて正面・側面は現在とほぼ同じ、妻面は当初からしばらくの間のみ白色塗装といった様子です。
ここでは、当時でも6400系内で独特の塗り分けであった1次車の塗り分け状況と現在に至るまでの変化について紹介します。
※登場から間もない頃の6400系を写した記録に関しては、新車紹介で6400系を取り上げる各種雑誌に6401Fの写真、保育社より発行の「カラーブックスー日本の私鉄② 近鉄(1989年2月22日発行)」に6401F・6405F・6406Fの写真が掲載されており、参考になると思います。他、広報誌「きんてつ」1986年6月号(Vol.69)では、6402Fが先頭を務める6400系重連の写真を表紙として利用客に向けた6400系の新車紹介が行われています。
登場時における1次車のマルーン色の塗り分けは、↑で引用したツイートに掲載されている画像から分かる通り、車体側面のドア上にある紅白色分断位置が現在よりも若干高い状態でした。パッと見で現在の塗り分けとの高さの違いを把握する分かりやすい指標としては、行先案内表示機や戸閉灯(1次車は登場時から現在に至るまで故障表示灯非設置/位置も系列他車より若干低め)が挙げられ、当時の紅白色分断位置は、これらの部品の一部を含みながら左右方向に通過する形で存在しています。当初からしばらくの間、裾帯や屋根周りに赤色塗装があった事および妻面が白色塗装であった事などは2・3次車と共通です。
当初高めであった車体側面における上側の紅白色分断位置は、その後、2&3次車や系列他車と同じ高さに改められました。塗り分けが変更された時期は不明ですが、恐らく他系列を含めて標準とされる紅白塗装の塗り分けが定まった後の検査・お色直し時に位置が改められたのではないかと思います。
一方、車体正面および側面における下側の紅白色分断位置に関しては、当初は系列他車と共通であったのが、後になって1次車のみ下げられています。
紅白色分断位置を下げる前の痕跡は現在でも確認が可能です。↑は、6407系C#6412を比較対象としてC#6502の前頭部を視た際の記録で、C#6502の現在のマルーン色塗装は、過去の紅白色分断位置に上塗りされる形で施されている事が見て取れます。また、乗務員扉左右にある白色塗装部も系列他車より若干細めとされているようです。
こちらの分断位置が下げられた時期も不明ですが、「サイドビュー近鉄5(レイルロード/2002発行)」の掲載写真を見る限りだと裾帯がある時期には既に下げられた状態であり、恐らく先述した上側の分断位置を系列他車と共通化させる際にこちらを変えたのではないかと思います。
この推測を基に話を進めるのであれば、6400系(6400系列)では、登場時から現在に至るまで1次車のみ他編成(系列他車)と車体の塗り分けが差別化され続けているという事になります。1次車と2&3次車とでは、内外装各所で幾らかの差異が見受けられますが、外装で全体的に目立つ違いはこのマルーン色の塗り分けです。
なお、同様に塗り分けを変えている事例は、6400系と同時期に登場した量産形VVVF制御車系列である3200系内でも存在しており、こちらは、車体側面における上側の紅白色分断位置に関して、1次車を含む[3201F-3203F]が位置を高めとした外観、増備車のみで構成される[3204F-3207F]は比較して位置を低めとした外観で長らく維持されています。
両系列とも、近鉄側からは外観を差別化し続ける事により何かしらの区別の必要が認識されている事が考えられますが、この事に関する具体的な事情は不明です。
今回の〈メモ〉は、紅白塗装を纏う現行近鉄一般車の車体マルーン色の塗り分けをテーマに6400系へ焦点を当てた内容でした。やや細かい要素への着眼になったかもしれませんが、こうした内容を(出来れば実車への観察を交えて)部分的にでも〈メモ〉として残しておく事自体は、過去・現在の車両に関する情報の参照や振り返りを行う際に少しばかり有意義になるのではないかと思えます。過去の自分の着眼点や気になっていた事を後から見直す事が出来るという点でも書き残しておいて損はないような気はしますし、今後も興味を持てた話題があれば〈メモ〉で取り上げていこうと思います。
今回の〈メモ〉は以上です。
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