■ 記事概要
2020年04月10日(金)、近鉄一般車8810系8813Fが2回目の車体更新を終えて高安検修場を出場しました。外装の小変化に対して、インテリアの方は、従前のものから大きく変えられています。
今回の記事では、更新出場後の8813Fについて、個人的に変化が目立つと感じた部分を簡単に紹介します。
■ 記事本文
こんにちは
今回取り上げるのは、近鉄電車。
紹介する話題は、先月に2回目の車体更新を終え、高安検修場を出場した8810系8813Fに関するものです。
第16記事目 目次
1:はじめに
2-1:正面前照灯の光源
2-2:妻面の窓数
〈余談1〉一般車への消火器追設で気になる点
2-3:その他
4:おわりに
5:リンク集
では、記事内容に移ります。
※ 以下、特記以外は [橿原神宮前/2020-04-29]
近鉄8810系は、奈良線系統および大阪線で活躍する区間車です。客室内の座席配列は、全てロングシートとなっており、1980・1981・1984の3年度で全8編成が製造されました。
今回取り上げる8813Fは、8810系として最初に竣工したグループに含まれる編成です。登場時以来、ずっと奈良線系統で活躍しており、奈良線や京都・橿原線でその姿を見る事が出来ます。
さて、そんな8810系ですが、1980年代前半に登場した車両群という事で、2000年代には、全編成に対して車体更新 (以下、A更新) が実施されました。
このA更新を最初の編成に実施して20年近く経過した2019年度からは、再度の車体更新(以下、B更新) 施行がスタートしています。8810系8編成の中で最初にB更新を終えたのが、今回取り上げる8813Fです。
ちなみに、2019年度は、丸屋根の冷房付き新製車に対するB更新施行がほとんど完了し、それに次ぐ形で界磁チョッパ制御の角屋根車に対するB更新がスタートした年度でした。8813Fは、在籍する角屋根車で最初にB更新を完了させた編成でもあります。
大きな支障等がなければ、他の角屋根車に対しても、8813Fと同様に順次B更新が施行されていく事になるのかなと思います。
2020年1月上旬 (=9/木) に高安検修場へ入場した8813Fは、約3ヵ月かけて内外装の更新を行い、4月上旬 (=10/金) に同所を出場。夕方に西大寺検車区へ回送された後、その日の夜の2042レ (=大和西大寺20:46発/[普通/京都]) より運用復帰しています。
ここ数年、高安検修場でB更新が施行された一般車は、急行車・区間車を問わず、内装材が大幅に変更される傾向にあり、8813Fも例に漏れる事なく変更されています。
B更新後の8813F、一度どこかのタイミングで車内外を見て回れたらと思っていたのですが、先日、早速その機会が巡ってきました。今回の記事では、内装面を中心にB更新施行後の8813Fをざっと紹介する事にします。
B更新前後において、全体外観はさほど変化していません。ただ、細かい変化はパッと見でも幾らか散見されます。
この項目では、以下、個人的に着目できた箇所の変化を簡単に紹介します。
一見して最も気づきやすく目立つ外装変化箇所は、前照灯だと思います。ここの光源は、登場時以来、HSBで維持していましたが、今回のB更新を契機にLEDへと変更されました。
ちなみに、正面に飾り板を持つ車両の前照灯光源LED化は、今回の8813F以前に1026系1034Fで行われています。
1034Fの前照灯は、2018年10月下旬 (=23/火) に五位堂へ短期間入場した際に交換されており、光源LED化を終えて出場 (=10.25/木) してからは、現在に至るまで同じ状態を保っています。
ただ、「シリーズ21」を除く一般車の前照灯光源の変更は、この1034F以降しばらく行われておらず、飾り板持ち車両で次に前照灯が交換されるのは、B更新時の8813Fまで待つ事となりました。
2例目の交換まで約1年半少し間が空いた事情は知りませんが、可能性として、今後交換を進めていく前に1034Fでしばらく視認性などの確認を行っていた事が考えられます。今後、3例目・4例目…と、工場入場時等の機会で他の車両にも普及していくのかどうかは気になる所です。
飾り板付き車両で先行して前照灯光源がLED化された1034Fと今回取り上げるB更新後の8813F、およびB更新前後の8810系 (8813F&8825F) で下り方先頭車の正面上側を比較すると、↑のようになります。いずれも前照灯が消灯した状態を写しました。
1034Fと8813Fを見比べた限り、前照灯部分に埋め込まれた灯具は、共に同じ物が使われている様子。8810系B更新前後の見た目に関しては、前照灯の交換だけでも多少の印象変化を感じ取る事が出来ます。
飾り板の前照灯具がある箇所の窪みに関しては、従前よりチョッパ制御車とVVVF制御車とで同程度の深さです。ただ、嵌め込まれた灯具が光源HSBの灯具か光源LEDの灯具かで、その深さに若干の差が生じています。
見た感じ、LED灯具の方が部品に奥行を持たせているのか、交換車2編成は、HSB灯具が嵌め込まれた他編成よりも窪みが浅い状態となりました。
2017年夏にB更新を受けた2000系2019F以降、一般車に対するB更新では、妻面の窓を一部埋めて消火器を設置するようになっており、8813Fも例外なく妻面の窓埋め&消火器の設置が行われました。
妻面で窓が埋められたのは、先にB更新が行われた8800系と同様、各中間M車の1枚です。妻面の窓数は、全体で2枚減った事になります。
窓埋めの車両とその場所は、C#8813[M] の非公式側1位寄りと C#8814[M] の非公式側2位寄りです。各妻面で埋めた方の窓については、以前の記事の〈参考〉で取り上げた事がありますが、8813Fも「各系統線区上り側から正面向かって通路右側」の窓が埋められました。
今後、各車の客室部に消火器や車椅子等スペースを設置していない角屋根4連が窓埋めを行う際も同様のスタイルとなる事が考えられます。
今後の消火器追設に関して個人的に気になっている事の一つに、A更新で既に車椅子等スペース (多目的区画) を設けた車両に対して窓埋めを行うかどうかという事があります。
A更新で車椅子等スペースを増設した車両の中でも、2000年代後半に更新を受けた車両は、スペース確保と一緒に消火器の取付も行っています。恐らく、これらの車両が後にわざわざ窓を埋めてまで消火器を移設する事はないはずです。
その一方、車椅子等スペースの確保と同時に消火器が設けられなかった車両もあります。これは、概ね2000年代前半にA更新を受けた車両が当てはまります。
こうした車両に対するB更新での消火器取付を、妻面の窓埋めで行うのか、それとも窓埋めする事なく予め設けられた車椅子等スペースを改造して行うのかは、現時点で気になる所です。金銭面を考慮すると、後者になりそうな予感はしますが。
ついでに言うと、消火器取付を窓埋めスタイルで継続するのかどうかという事や1編成あたりに消火器を載せる車両の数も少し気になっています。以下、2000年代後半にA更新を終えたアルミ車体の区間車3200系から現在までの改装について軽く触れます。
3200系は、A更新時、編成内各車で確保した車椅子等スペースに握り棒とヒーターがセットになっている箱の新設を行い、各車両端部の妻面下部や妻面近くの側面下部に消火器取付を行った系列です。「シリーズ21」の内装を参考にした同様の改装は、続いてA更新を受けた鋼製の急行車5200系列でも行われましたが、同じスタイルを引き継いだのは、最初に更新を受けた5202Fのみでした。その他の5200系列各編成に対するA更新では、握り棒とヒーターがセットになっている箱の設置が省略されており、これは車椅子等スペース作りの次のやり方として、以降しばらく定着しています。
中間各車両の端部に車椅子等スペースを確保し、かつ消火器を取り付ける事は、5200系列では継続して行われましたが、同系列のA更新が本格化した2008年度以降、妻面窓埋めが始まるまでにB更新を受けた他の鋼製車では、編成内全ての車両に車椅子等スペースを確保する事が採られていません。
スペースは、編成内に1両確保が基本となりました。
客室部への消火器追加取付もなかったため、編成内で消火器を積む車両の数は、乗務員室がある車両の数と等しい状態になっています。3連でも4連でも、消火器の設置は乗務員室がある車両のみです。
その後、妻面窓埋めで消火器取り付けを行うようになると、編成内で消火器を積む車両の数に関しては、乗務員室内設置も含めて、再び編成内の各車に1つの状態となっています。車椅子等スペースの確保については、今回取り上げの8813Fより編成内2両となりました。今後は、編成内2か所で定着するのかもしれません。
以上を踏まえて、今後で気になるのは、アルミ車に対する車体更新内容です。
こちらも昨年度から始まった角屋根鋼製車のB更新がある程度進んだ辺りでスタートしそうな気はしますが、アルミ車体と鋼製車体とでは改造事情が若干異なりそうな感じもしますし、鋼製車に対する消火器取付のトレンドである窓埋めがそのまま行われるのかどうかは、気になる点となっています。
3200系・5200系・7000系のように、窓埋めを伴うやり方ではなく、妻面やその周辺下側に追加で埋め込むという事もありそうな気はしますが、実際どうなるのでしょうね。
消火器を載せる車両の数については、3200系だと中間各車に1つ積み (客室部分) かつ両先頭車に2つ積み (=乗務員室部分と客室部分) となっていますが、これが踏襲されるのかどうか、すなわち各中間車および両先頭車の客室部分への消火器設置が今後のアルミ車A更新でも続けられるのかという点で気になっています。
5202Fの前後でA更新を受けた車両や最近B更新を受けた車両を見る限りだと、乗務員室部分であれ客室部分であれ、1両に1つあれば良いという風に見えるので、先頭車の方で追加設置される事は現状なさそうにみえますが、着目はしておこうと思えます。
アルミ車の他、A更新時に車椅子等スペースを設置しなかった車両でも、2連の場合、窓埋めを行ってまで客室部分に追加設置をするのかどうかは、同じく気になる所です。
〈余談1〉終
更新前後の外装変化は、上記で紹介した2点が主です。その他の変化としては、乗務員扉が若干改造 (交換?) されている事や、非常用車側灯のカバーが透明の物に交換されている事などが挙げられます。
各所扉上の雨樋に関しては、A更新時に追設されたものがそのまま使われている様子。各所扉下の沓摺については、今回のB更新でもステンレス無塗装の物に交換されておらず、登場時からの凹凸ある鉄板で維持しています。
B更新後の内装は、ほとんどの部分が6200系6211F以降に出場した車両群と同仕様の新内装です。
この項目では、以下、B更新後の8813Fが初出と感じられる箇所も交えながら、各車の内装で着目できた点を紹介します。
C#8914[Tc] の車内運転台方は↑のような感じ。6200系6211Fからスタートした、黒とグレーを基調とするロングシートの車内です。8600系8622Fから始まった、ドア付近の吊手増設や座席部へのスタンションポール取り付けといった要素も見られます。
8813Fは、今回のB更新で乗務員室内に手すりを増設した他、客室含む全体のカーテン布地を登場時の青色系の物からグレー色の物へ交換して出場しました。座席のモケット交換と各車2位寄りの優先席区画増設については、B更新に先行して2018年初頭に行われていますが、更新完了後も同じ状態を維持しています。
乗降部付近に関しては、A更新時に設けられた透明のスリップ防止材が今回のB更新で警戒色の別物へ交換されています。沓摺に関しては、前項で触れた通り、登場時からのスタイルで維持です。
A更新時に複層ガラス化した乗降ドアも、そのままの状態を維持していますが、室内側の見た目は、新内装に合わせる形で黒色基調へ改められました。複層ガラス持ち車両の新内装化は、8813Fが最初です。
ちなみに、乗降ドアに関してもう一つ細かいことを言うと、今回のB更新で、各扉ガラス部に記された横長矢印タイプの「ゆびにごちゅうい」表記が2000年代初頭から登場した正方形タイプの表記へと変更されています。今後、他の車両も同様に変えられていくのかもしれませんね。
続いて C#8914[Tc] の車内妻面方ですが、こちらは今回のB更新で車椅子等スペースが作られました。これ以前にB更新を受けた8600系の一部や8800系も同じ位置、すなわち妻面寄りの運転台がない側で区画を確保しており、避難はしごの設置も共通してこの場所となっています。
また、前項で触れた通り、C#8814[M] の2位寄り妻面は、消火器設置に伴って窓が1枚埋められたため、片側の窓からは C#8814[M] の車内を見通せなくなりました。
2位寄りの妻面窓が埋められた C#8814[M] の室内両端は↑のような感じ。2018年初頭から両端が優先座席区画となっているため、この区画の半数は、近くに消化器がある状態となっています。
1位寄りの妻面窓が埋められた C#8813[M] の室内両端も、概ね C#8814[M] と同じ雰囲気です。
そういえば、今回からなのかは分かりませんが、8813Fの各車では、優先席区画の窓において、案内表示のプリントがガラスとカーテンの両方に行われています。
ガラス側とカーテン側、それぞれに案内表示を行う事で、カーテンを閉めた状態でも室内側から席の案内表示が見えるようになりました。最近になって一段と主張が強くなった区画ですが、その動きは収まりませんね (笑)
最後は C#8913[Tc] です。今回の更新で、C#8914[Tc] と同様、この車両にも妻面寄りに車椅子等スペースが作られました。場所は、運転台がない側で確保されており、C#8914[Tc] の区画とは対角線上に位置しています。
スペースの追設は、8600系の一部や8800系、および同時期にB更新を受けた他の鋼製車だと、上り方先頭車の1両のみでした。現状、上下方先頭車それぞれに車椅子等スペースが確保されたB更新車は、8813Fのみとなっています。
消火器の設置と同じように考えるなら、今後は2両 (or 3両1編成) 単位で1区画が確保されていく事になるのかもしれません。
また、C#8913[Tc] 側の車椅子等スペースには、C#8914[Tc] と違って避難はしごが設置されていないので、代わりとして妻面側に手摺が追設されています。
3200系や5200系のA更新だと、手摺の追設は側面のみでしたが、今後は、側面と妻面の両方に設けるスタイルが標準となるのかもしれません。
乗務員室側については、C#8914[Tc] と同様の雰囲気です。
消火器に関しては、中間車だと妻面の窓を埋める事で追加設置しましたが、先頭車では乗務員室内に収納しており、乗務員室扉横には、その存在を示すシールが貼ってあります。
8813Fの消火器は、B更新前から両先頭車の乗務員室内に1つずつの装備で、更新後も置き場所は変化無しでした。これに関しては、B更新待ちで、同じく乗務員室内の機器箱に消火器を収納している他編成も変わらないのかもしれません。
以上、簡単にですが、B更新を終えた8813Fの内外装変化についてざっと紹介しました。
8813F、更新工事を終えてどんな様子になったのか気になっていたのですが、出場してあまり時間が経っていない段階で内外装を見て回れたのは良かったです。
全体を通して、やはり内装面の変化を強く実感しました。
とりわけ気になっていた妻面の窓埋めに関しては、8813Fの場合、8800系と同様のスタイルとなって出場しました。
この記事を書いた時点の高安には、1200系や6600系が入場していますが、今後も、これらの車両含めた他の車両の消火器追設がどうなっていくのかには、注目しておこうと思えます。
2018年秋に発売された鉄道ピクトリアル誌の近鉄特集号には、車両の使用年数について、特急車50年・一般車60年を想定との記載がありました。
今回B更新を終えて出場した8813Fは、1981年竣工の39年選手です。
まだまだ活躍は続きそうですね。
今回の記事は以上です。
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