ピロのブログVer3

Ver2の続きです

近鉄一般車 メモ

〈メモ〉近鉄1253系-ク1353形の転落防止用注意放送装置

こんばんは

今回の覚え書き内容は表題の通りです。

車両をよく観察している人や鉄道模型を趣味でやっている人にとっては度々気付かされる事かもしれませんが、近鉄各線で現役中の各系列・形式には、他車と比較した時の内外装の見た目で似ていたり違ったりする細かな要素が様々にあります。

車両ごとの共通点や差異は、現在に至るまで多様に見つける事が可能です。差異に関しては、他系列間のみならず同一形式間でも色々と存在しています。この違いの発生要因は、車両製造年次の違い(改良)であったり検査入場時の手入れによるものであったりと様々あるように思いますが、今回は後者にあたる例として、一般車1253系ク1353形の排障装置に追設された転落防止用注意放送装置の設置状況についてメモしておく事にしました。1254系ク1354形および1259系ク1359形についても併せて取り上げます。


■ 第12〈メモ〉

●近鉄1253系-ク1353形の転落防止用注意放送装置

1253系は、大阪・名古屋線系統の2両編成車として1992年度に登場した系列です。標準軌線共通仕様で竣工した1233系の派生系列にあたり、同系列群の中では、ボルスタレス台車を履いている点が大きな特徴となっています。同時期に竣工した1254系に関しては、1253系の同仕様の性能に滑走防止装置を追加した事で車両形式が分派しました。

また、名古屋線系統を活躍の場とする1253系の一部に関しては、2000年代になってワンマン運転に対応する改造を受けた事で各車の車両形式が改められています。こちらは、類似する他2連車と区別する目的あっての事か、所属系列が1259系へと変更されました。


登場以来、大阪・名古屋線系統での活躍で一貫する上記3系列は、車体更新等の大きな改造も無いまま現在に至ります。ただ、外装・内装の細かな要素では時期別・編成別で色々と手が入れらており、今回取り上げる転落防止用注意放送装置の追設はそんな動きの1つです。

車両関連で乗客の転落防止を防ぐ措置としては、妻面部分に対する転落防止幌の常設が分かりやすい事例だと思いますが、近鉄車両の場合、この装置は正面部分に対して設置されていません。但し、正面側で転落防止措置を何も行っていないというわけではなく、転落防止幌の代わりに機能する装置として、乗客に対して注意喚起の放送を流す転落防止用注意放送装置が追設されています。これは、増解結を頻繁に行う汎用特急車および一般車に対して設置が進んでおり、今回取り上げる1253系でも順次追設が行われました。

〈五位堂-近鉄下田/2021-01-29〉※C#1357

1253系で転落防止用注意放送装置が追設された車両の見た目は↑のような感じ。設置車両はク1353形(orク1354形orク1359形/以下、特に区別する必要が無い場合は「ク1353形」に統一して呼称)で、正面下部に設けられた排障装置の運転台側・車掌台側それぞれにスピーカーらしき物体が追設されています(以下、この追設物を「スピーカー」と呼称)。

編成内でこれらを追設する箇所は、大阪・名古屋線系統の一般車だと上り方先頭車の排障装置部分としている模様。他線区で活躍する一般車および汎用特急車の設置車両に関しては、追設・新規常設共に、奈良線系統一般車が下り方先頭車・南大阪線系統一般車や汎用特急車(標準軌・狭軌)が上り方先頭車とされています。

〈五位堂-近鉄下田/2021-01-29〉
〈五位堂-近鉄下田/2021-01-29〉

スピーカーは、排障装置の車体取り付け部に後付けできるよう、コンパクトに設計されています。近鉄では、これと同じタイプが長らく採用されているようで、2002年度竣工の「シリーズ21」に新設されて以降、他系列の2020年度追設分に至るまで形状に大きな変化はありません。追設されたスピーカーの取り付け部に関しては、ク1353形の場合、↑のような見た目です。ク1354形やク1359形の見た目も同様で、運転台側・車掌台側で各1基ずつ存在するスピーカーは、共に既存の排障装置取付部を活用する形で直に設置されています。

「シリーズ21」や「Ace・ACE(リニューアル車)」に設けられたスピーカーは、いずれも排障装置に覆われる形で外側から見えにくくなっていますが、それ以外の一般車には、スピーカーを覆うカバー等が特にありません。こちらは外側からでもハッキリ見えるので、追設後は外観上のアクセントとなっているように思います。

〈橿原神宮前/2021-01-31〉※C#9123

このスピーカーから流れる音声や放送時機については、「シリーズ21」や「Ace」等で馴染んでいる仕様と同じです。すなわち、注意喚起を促す約7秒の案内放送とそれに続く約2秒のインターバルで構成された計約9秒周期の音声案内が営業列車充当時の駅停車中に流されます。

音声が放送されるのは、スピーカーが設置された上り方先頭車と別編成の下り方先頭車が向き合って連結している時のみです。当該上り方先頭車が列車の前方ないし後方を務める際は、スピーカーも機能しません。

〈五位堂-近鉄下田/2021-01-29〉
〈五位堂-近鉄下田/2021-01-29〉

スピーカーの裏側については、↑のような見た目です。縦全体に([ ) 形状の持ち手のようなものがあり、そこにスピーカーから出るコードが巻き付けられて固定されています。コードの方は、上まで登り切った後、そのまま車体床面下の奥側へ延びている様子です。他、スピーカーの厚みは、見た感じだと、車体側にある排障装置取付部の横長さより少し短い程度となっています。


〈五位堂-近鉄下田/2021-01-29〉

以上、ク1353形正面下部の排障装置に追設された転落防止用注意放送装置の外観についてざっと取り上げてみました。装置の存在を象徴するスピーカーの設置状況に関しては、2021年3月時点において、1253系だと1260F以外・1254系および1259系だと既に全編成に対して追設が完了しています。3系列の内、1253系に関しては、ここ1年少しの間で急速に取付が進みました。

取付は、全体で一気に行われたわけではなく、1259系は2013年度から取付が行われています。3系列の残りの編成に関しては、その後、2014・2015・2020の3年度で少しずつ設置が進められました。スピーカーの追設自体は、同じ時期に3系列以外の車両でも随時進行しており、設置に伴う改造が出来るようになった編成から順次追設の流れでスピーカー付き車両が増加していったように思います。

〈橿原神宮前/2020-04-13〉
〈新田辺/2009-07-31〉

ちなみに、一般車でスピーカーが追設された編成の共通点としては、編成内各車の室内客用側扉直上(=鴨居部)において車内案内表示機が千鳥配置で備わった状態となっている事が挙げられます。各編成のスピーカー設置時期は様々ですが、今〈メモ〉で取り上げた車両群の中で設置が早かった1259系5本(=1265F-1269F)に関しては、2000年代実施の改造で3色LED式の車内案内表示機が備えられた状態からの改造でした。

「シリーズ21」以前に登場した同様の一般車両に対するスピーカー追設は、既に他系列でも進行しており、阪神乗り入れ対応車だと5800系5802F(=2007.08/阪神線乗り入れ対応改造時)から・同非対応車だと1026系1034F(=2009.05/検査入場時)から排障装置にスピーカーが追設されています。このパターンのスピーカー追設は、全体でみれば奈良線系車両に対しての改造が早く、そこから少しずつ大阪・名古屋・南大阪線系統車両にも普及し、2013年度が動きの終盤(=車内案内表示機取付済車両へのスピーカー追設が完了)でした。

〈関屋-大阪教育大前/2016-12-15〉
〈橿原神宮前/2020-12-12〉

一方、2013年度改造の1259系5本以降にスピーカーが追設された編成は、従前より車内案内表示機を備えていない状態でしたが、こちらは転落防止用注意放送装置の設置に際して車内案内表示機も追設されました。この動きは同じ状況にあった一般車他系列でも起こっており、2018年度以前の改造車は3色LED式の表示機・同年度以降の改造車はLCD式の表示機(2020.09以降は後の2画面化に対応した表示機)が設置されています。

車内案内表示機を備えていない車両に対して、スピーカーと表示機の追設を同時に実施している理由は分かりませんが、もしかしたら、編成全体で働く情報伝送装置のサービス機器制御機能を弄る都合で効率的に併せた設置を行っているという事なのかもしれません。車体更新時以外のタイミングで車内案内表示機の設置も併せて行うパターンのスピーカー追設の動きは、2014年度改造の5800系5811Fから始まっており、以降は設置する案内表示機の種類が変わりながらも2020年度現在まで継続(※1)しています。


(※1)2021.07.01追記

2021年度に入ってからは、車内案内表示器の設置は行わずにスピーカーのみ追設するパターンも登場しました。運転室車掌台側の指令機器に関しては、スピーカー追設に伴って拡張されています。追設車両に関しては、今後の準備が整い次第、優先的に鴨居部へ車内案内表示機を追加する動きが出て来る可能性はあるかもしれません。現状、確認出来ているスピーカーの追設パターンは、以下の3種です。

①:車内案内表示機を先に設置し後でスピーカーも追設するパターン

・初出時期-阪神乗入対応車:2007年度(5800系5802F~)/同非対応車:2009年度(1026系1034F~)

②:車内案内表示機とスピーカーを同時に追設するパターン

・初出時期-車体更新時:2009年度(5200系5207F~)/車体更新時以外:2014年度(5800系5811F~)

※表示機の表示方式が[3色LED式→フルカラーLED式]へと変化したのは2018年度(1233系1238F~)

③:スピーカーを先に設置するパターン(後で車内案内表示機を追設する可能性アリ)

・初出時期-2021年度(1430系1433F~)


〈参考〉近鉄1253系-転落防止用注意放送装置の追設時期(時期別・古い順)

※1253系の他、1254系・1259系の各編成も取り上げ

※放送を流すスピーカーの追設はク1353形・ク1354形・ク1359形の排障装置に対して実施

※時期等の記載は{年月:編成-取付車両番号 [取付を行った場所(追設のタイミング)]}で表記


■2013年度

2013.05:1266F-C#1366 [五位堂(検査入場時)] ※車内案内表示機(3色LED式)は2002.10に塩浜で追設

2013.06:1267F-C#1367 [五位堂(入場時)] ※車内案内表示機(3色LED式)は2002.11に塩浜で追設

2013.09:1269F-C#1369 [五位堂(検査入場時)] ※車内案内表示機(3色LED式)は2003.03に塩浜で追設

2013.11:1265F-C#1365 [五位堂(検査入場時)] ※車内案内表示機(3色LED式)は2003.09に塩浜で追設

2014.02:1268F-C#1368 [塩浜?(入場時)] ※車内案内表示機(3色LED式)は2003.01に塩浜で追設

■2014年度

2015.02:1259F-C#1359 [五位堂(入場時)] ※車内案内表示機(3色LED式)も併せて追設

■2015年度

2015.06:1253F-C#1353 [五位堂(検査入場時)] ※車内案内表示機(3色LED式)も併せて追設

2015.07:1254F-C#1354 [五位堂(検査入場時)] ※車内案内表示機(3色LED式)も併せて追設

■2020年度

2020.09:1255F-C#1355 [五位堂(検査入場時)] ※車内案内表示機(LCD式/2画面化対応)も併せて追設

2020.09:1256F-C#1356 [五位堂(検査入場時)] ※車内案内表示機(LCD式/2画面化対応)も併せて追設

2020.10:1261F-C#1361 [五位堂(入場時)] ※車内案内表示機(LCD式/2画面化対応)も併せて追設

2021.01:1257F-C#1357 [五位堂(入場時)] ※車内案内表示機(LCD式/2画面化対応)も併せて追設


〈参考〉


今回の〈メモ〉は、転落防止用注意放送装置の追設をテーマに1253系(と1254・1259系)に焦点を当てた内容でしたが、先述している通り、同様の改造は他系列でも展開しています。追設パターンは、1253系で見られた2つの内、どちらか一方もしくは両方です。着目できる違いは追設の時期および時機の差ぐらいなので、こちらも個別に〈メモ〉で扱うかどうかは考え中ですが、ある程度まで動きがまとまってきたら通常記事か【特集】あたりでまとめて取り上げてみようと思います。

今回の〈メモ〉は以上です。


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近鉄電車が見える家で育った鉄道オタク。車両の差異や変遷に興味あり。鉄道の他に鳥も好きで、最近は鳩に癒される事がしばしば。